【最新2024年】フレキシブルオフィス活用の実態

働き方の多様化により、ここ数年でオフィスのあり方は大きく変化しています。中でも、中小零細企業や個人事業主の間では、「フレキシブルオフィス」というオフィス形態を利用して事業を行っている人が増えていると言われています。

フレキシブルオフィスとは、企業や個人が柔軟に利用できるオフィススペースのことで、従来の固定されたオフィススペースとは異なり、利用者のニーズに応じてスペースを選んだり、契約期間を調整したりできるのが特徴です。

では、実際にフレキシブルオフィスの活用状況はどのようになっているのでしょうか?ここでは、フレキシブルオフィスの現状について、参照データをもとに考察していきます。

フレキシブルオフィスの特徴

フレキシブルオフィスには、主に次の5つの特徴があります。

1.短期契約が可能

フレキシブルオフィスでは、必要な期間だけ利用できる短期契約が可能です。通常の賃貸オフィス契約では、半年や1年といった一定の期間が求められることが多いですが、フレキシブルオフィスでは短期契約ができるため、企業や個人事業主が変動するニーズに柔軟に対応することができます。

2.共有スペースの利用が可能

多くのフレキシブルオフィスでは、コワーキングスペース、共有ラウンジ、会議室などが設けられており、他の利用者と交流するネットワーキングの機会が提供されます。カフェや自宅での作業に慣れている方でも、環境を変えて作業することで、新たな刺激を得たり、他の利用者との交流を通じて精神的なリフレッシュが図れたりする点がメリットです。

3.設備が充実している

利用する形態やエリア、スペースの規模によって異なる場合もありますが、ほとんどのフレキシブルオフィスでは、インターネット接続環境、オフィス家具、コピー機やFAXなどの備品、会議室、カフェテリアなど、業務に必要な設備が整っています。また、受付スタッフが常駐しているオフィスでは、セキュリティや来訪者対応などの面でも安心して利用できるため、企業や個人事業主にとって非常に重宝されています。

4.コストパフォーマンスが高い

フレキシブルオフィスの大きな魅力の一つは、コストパフォーマンスの高さです。通常の賃貸オフィスでは、敷金・礼金といった初期費用がかかるうえ、賃料も高額になることが多く、オフィスの内装や備品の購入・レンタルにもコストがかかるため、負担が大きいのが課題です。

一方、フレキシブルオフィスでは、敷金や礼金がかからない場合も多く、月額利用料も抑えられているため、初期コストを大幅に削減できます。また、必要なスペースやオプションサービスだけを利用できるため、無駄な支出を避けることが可能です。さらに、社員数の増減に応じて、同じオフィス内で契約形態を変更したり、簡単にスペースを移動したりすることができるため、コスト面でも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。

5.場所の選択に柔軟性がある

フレキシブルオフィスは、都市の中心部や交通の便が良い場所に設置されていることが多く、利用者は自分のビジネスに合った場所を自由に選ぶことができます。通常の賃貸オフィスでは、物件の空き状況や予算によって選べるエリアが限られますが、フレキシブルオフィスならば、ビジネスメリットの高いエリアでオフィスを構えることが可能です。たとえば、都心の一等地など、スタートアップ企業や個人事業主が通常は手が届かないようなエリアでも、フレキシブルオフィスを利用すればアクセスが容易になります。

このように、フレキシブルオフィスの柔軟なオフィススペースは、特にスタートアップ企業やフリーランスの働き方に非常に適しており、リモートワークの普及も相まって、近年その需要が急速に増加しています。また、フレキシブルオフィスは運営会社によって呼び名が異なるため、利用者によっては別のオフィス形態として捉えられることもあります。

例えば、「レンタルオフィス」「シェアオフィス」「コワーキングスペース」「サービスオフィス」「サテライトオフィス」などと呼ばれることがありますが、実際には同じような機能を持つオフィスであることが多いです。

主要エリアにおけるフレキシブルオフィスの実態

フレキシブルオフィスは首都圏周辺に集中しており、その数は1,000から2,000とも言われています。特に、東京23区エリアがその大半を占めています。東京都には45万3145の企業が存在し、そのうち会社企業は28万6491社とされています(引用参照:東京都の統計「令和3年経済センサス‐活動調査報告」)。フレキシブルオフィスの利用においては、企業の本社が東京にない場合でも問題なく、地方企業の東京拠点や、東京郊外にある企業のサテライトオフィスとして利用されるケースが多いのが特徴です。これにより、地方企業が都心でのアクセスを強化し、ビジネス機会を広げる手段としても利用されています。

一方、首都圏以外の地方都市では、大阪を中心とした関西圏で多少の広がりを見せているものの、それ以外のエリアではフレキシブルオフィスの数は限られています。名古屋、広島、福岡、仙台、札幌などの政令指定都市のように一定の人口とビジネス需要が見込めるエリアでなければ、多くのフレキシブルオフィスは設置されていません。このことから、地方におけるフレキシブルオフィスの普及には、需要と集客が重要な要素であることが伺えます。

フレキシブルオフィスの店舗形態

フレキシブルオフィスには、1店舗のみで運営されるものもあれば、複数の拠点を展開するものもあります。また、広義には主要駅などで見かけるボックスタイプの簡易オフィスもフレキシブルオフィスとして定義されることがあります。

1店舗型のフレキシブルオフィス

1店舗型のフレキシブルオフィスとは、運営会社が複数の拠点を持たず、1店舗のみでスペースを提供している形態を指します。多くは小規模事業者や個人のオーナーによって運営されており、店舗数は少ないものの、きめ細やかなサービスや柔軟な対応が期待できるのが特徴です。かつては都心の雑居ビルに入居しているケースが多かったものの、駅前の再開発や老朽化した建物の建て替えにより、新しく綺麗なフレキシブルオフィスが増えています。

複数店舗型のフレキシブルオフィス

複数店舗型のフレキシブルオフィスとは、運営会社が首都圏をはじめとする関東圏や地方の大都市エリアに複数の店舗を展開し、各店舗で同様のサービスを提供している形態を指します。大手不動産会社、電鉄系企業、外資系企業が運営するケースが多く、運営会社によっては、東京23区内の主要JR駅付近に拠点を構え、同じ運営会社が展開する他店舗でも自由に利用できる仕組みを提供しているところもあります。

この仕組みにより、メインで使用する店舗に加え、クライアント訪問時や出張時にも最寄りのフレキシブルオフィスを利用できるため、利便性の高さを活かしてビジネスを円滑に進めることが可能です。このような複数店舗型のフレキシブルオフィスは、現在最も拠点数を増やしているタイプであり、今後もさらなる店舗拡大が期待されています。

ボックス型のフレキシブルオフィス

ボックス型フレキシブルオフィスとは、ここ数年で主要駅を中心に展開されている1人用の個室型ボックスを指します。近年、オンライン会議の機会が増え、カフェやファミレスなどの公共スペースを利用してミーティングに参加する人も多く見受けられますが、その場合、周囲の雑音やプライバシーの確保が難しく、情報漏洩のリスクもあるため、満足のいく仕事ができないという課題があります。

そのような状況を解決するために、ボックス型フレキシブルオフィスは、簡易的にオンライン会議や集中作業を行う場所として時間貸しで利用できるのが特徴です。このタイプのオフィスはメインのオフィスとしての利用には向いていませんが、特に外出が多い営業職の方などが、移動の合間にスポット的に仕事を行う際に適しています。

フレキシブルオフィスの需要予測について

株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンクによると、2026年度のフレキシブルオフィス市場は2,300億円に達する見込みとされています。2020年の市場規模が約800億円であったことを考えると、わずか6年で約3倍に拡大することが予測されています。この急速な市場の成長は、働き方の多様化やリモートワークの定着による需要の高まりが大きな要因とされています。

また、今後はオフィススペースをダウンサイジングする大手企業も増える可能性があり、さらにフレキシブルオフィスの需要が高まることが期待されています。企業がコスト効率を重視しつつ、柔軟な働き方を取り入れる中で、フレキシブルオフィスの市場拡大は今後も続くと見られています。

フレキシブルオフィス利用は何を重視するかがポイント

フレキシブルオフィスは、基本的にスペース貸しが主なサービスであり、ビジネス利用が目的となるため、他社との差別化がエリアや価格以外ではわかりにくい傾向があります。特に、スタートアップ企業や個人事業主、また地方企業が東京に進出する際にフレキシブルオフィスを活用する場合、利用者が何を重視するかによって選ぶオフィスの形態も異なります。

例えば、コストを最小限に抑えたいと考える企業であれば、低価格で利用できるフレキシブルオフィスが最適です。一方で、クライアントが訪問する機会が多い企業の場合、多少のコストがかかっても内装が整い、信頼感を与えるデザインのオフィスが適しているでしょう。このように、何を優先するかは利用者ごとに異なり、最適な選択をするためには自身のビジネススタイルや利用目的を明確にすることが重要です。

フレキシブルオフィスの利用が難しい業種もある

フレキシブルオフィスは多くの業種で利用されていますが、業種によっては利用が難しいケースもあります。たとえば、人材紹介業や宅建業、古物商などの許認可が必要な業種や、弁護士や税理士などの士業で法律によって事務所要件が定められている場合、一部のフレキシブルオフィスでは要件を満たせないことがあります。

具体的に、人材紹介業の場合、開業にあたりフレキシブルオフィスを利用するには「他の求人者または求職者と同室にならず、対面での職業紹介を行うことができる」ために、鍵付きの完全個室を持つオフィスでなければ要件を満たせません。こうした規制があるため、利用できるオフィスの選択肢が狭まることがあります。

そのため、フレキシブルオフィスを検討する際には、まず入居条件が自社の業種や事務所要件に適合しているかを確認することが重要です。そのうえで、コストやエリアなどの要素を考慮し、最適なオフィスを選ぶことが求められます。

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