賃貸オフィスは今こそダウンサイジング

働き方改革の後、新型コロナウイルスの影響を受けた後、労働者の労働環境は大きく見直されています。特にIT企業を中心とするパソコンを使用した仕事の場合、インターネットが利用可能で、パソコンを操作できる環境が整っていれば、どこでも仕事ができる時代となっています。このような時代において、大規模なオフィスや豪華なオフィスを持つ意義はあるのでしょうか。

今回は、賃貸オフィスを契約している企業に向けて、オフィスコストを極力下げるための施策についてお伝えしていきます。

賃貸オフィスのダウンサイジング

企業のオフィスダウンサイジングとは、従業員数やスペースの規模を縮小することを指します。通常、経済的な理由や業務の変化が原因で起こります。例えば、コスト削減、効率化、リソースの最適利用が必要な場合や、リモートワークの普及によりオフィスへの需要が減少した場合などです。

企業がダウンサイジングを行う目的には、コスト削減、効率化、リソースの最適利用などがあります。オフィススペースの縮小により、賃貸料や光熱費などの固定費削減が可能となり、企業の経済的負担を軽減できます。また、IT技術の進歩により、従業員がリモートで作業しやすくなったことから、オフィスへの依存度が低下し、大規模なオフィススペースを維持する必要がなくなっています。

オフィスをダウンサイジングするケースはなにも大企業に限られたことではなく、中小企業にも波及しています。

東京商工リサーチの調査によると、2020-2023年に本社および本社機能を移転した企業は、10万5,367社(2017-2020年比60.5%増)でした。コロナウイルス感染拡大により、外出自粛要請や在宅勤務、リモート会議の普及といった形で労働者の働き方はこれまでのオフィス集約型から大きく変化しました。また、人流抑制により都市部の空洞化といった職場の環境もあり、賃料が安いオフィスへの移転、オフィス面積の縮小も加速するなど企業の本社および本社機能の移転が活発に行われています(データ引用参照:東京商工リサーチ「~2020-2023年大都市の「本社機能移転状況」調査~」)。

賃貸オフィスのダウンサイジングによるメリット

オフィスのダウンサイジングを行うことによるメリットは以下の通りです。
・オフィスランニングコストの削減(テナント料、光熱費、通信費など)
・従業員の交通費削減

2023年頃は光熱費の上昇が大きな問題となりました。この点については政府が電気・ガス価格激変緩和対策事業として2024年4月分までは光熱費負担が減額されることとなっておりましたが、これについては2024年5月分までで軽減措置を終了すると発表されていますので、今後企業の光熱費負担はまた増えることが予想されます。そう考えると、ダウンサイジングすることで光熱費上昇に備えることができます。

また交通費削減についても見込むことができるケースがあります。ただし、これはリモートワークを継続している場合ですが、昨今はサテライトオフィスなどの設置を行うことで、通勤時間を短縮する(それに伴う通勤コストを削減する)企業が増えています。

サテライトオフィスとは?

サテライトオフィスは、通常の本社や主要なオフィスから離れた場所に設立される小規模なオフィスを言います。サテライトオフィスは、従業員が通勤しやすい場所や特定の地域における市場やクライアントに近い場所に設置されることが多いオフィス形態です。サテライトオフィス設置により、従業員のワークライフバランスを向上させる目的で設置されることがあります。

サテライトオフィスは、リモートワークが一般的になる中、従業員が一カ所に集中して働く必要が減少した企業にとって、サテライトオフィスは特に有効です。これにより、従業員は居住エリアに近いサテライトオフィスで働くことができ、通勤時間を短縮したり柔軟な労働環境を享受したりすることができます。

賃貸オフィスのダウンサイジングにおすすめのオフィス形態

賃貸オフィスをダウンサイジングする際に考えられる主な方法は以下の通りです。
・オフィスエリアを変える
・オフィスグレードを下げる

オフィスエリアを変えるのは多くの社員がいる場合、通勤ルートが変わるなどのリスクも高いので、大企業であっても中小企業であってもあまり得策ではありません。そのためオフィスグレードを下げるというのであれば、オフィススペースを小さくする、上階から下階に降りてくるなどで賃料を下げることができるかもしれません。ただし、一般的に賃貸オフィスを利用する際には、保証金や敷金など初期費用がかかること、また引っ越し資金などもかかりますし、原状回復および新たなオフィスの内装工事が必要になるでしょう。

そこで、賃貸オフィスではなく、レンタルオフィスやシェアオフィスといったフレキシブルオフィスへの移転によるダウンサイジングをはかることで、大幅にコストを削減することができます。

フレキシブルオフィス

フレキシブルオフィスとは、柔軟な働き方のためのオフィススペースです。従業員は、必要に応じてオフィスとなるスペースに出勤し自分の作業を行うことができますが、同時にリモートワークを選択することもできます。このフレキシブルオフィスは、さまざまなスペースや設備を柔軟に活用できます。

フレキシブルオフィスには、以下のような特徴を持っています。

共有スペースが利用可能

ミーティングルーム、ラウンジ、会議室、休憩スペースなどの共有スペースがあり、利用者はこれらのスペースを自由に利用することができます。

オープンデスクが利用可能

オープンデスクは席やデスクが固定されていない状態のワーキングスペースのこと。利用者は必要に応じて利用可能なデスクを選択し、その日の作業を行います。シェアオフィスやコワーキングスペースなどに設置されており、日によって利用する場所が変わることがあります。

フレキシブルな勤務時間

フレキシブルオフィスは、利用者が自分の都合に合わせて勤務時間を選択できることがあります。これによってワークライフバランスが向上し、従業員の生産性や満足度が向上することが期待されます。フレキシブルオフィスは、特にリモートワークの増加や従業員の柔軟な働き方へのニーズが高まっている現代において、多くの企業や組織に採用されています。

賃貸オフィスのダウンサイジングにおすすめなオフィス

賃貸オフィスのダウンサイジングにフレキシブルオフィスがおすすめだとお伝えしてきましたが、どのようなタイプのフレキシブルオフィスがおすすめかは、従業員の人数や利用形態、事業形態によっても変わってきます。

ここからは、フレキシブルオフィスおすすめの3つのオフィス形態をご紹介します。

レンタルオフィス

レンタルオフィスとは、企業が一定期間、個室ベースのオフィススペースを借りることができるオフィス形態を意味します。レンタルオフィスは机や椅子のオフィス家具や備品、通信設備、清掃サービスなどが料金に含まれています。これにより、利用者はオフィスの運営や管理に関する負担を軽減し、すぐにでも業務を開始することができます。

レンタルオフィスの特徴ですが、通常、短期間から長期に至るまで柔軟に利用することができます。企業の成長や変化に合わせて、スペースを拡大または縮小することも可能です。基本的に個室スペース利用となりますが、運営会社によっては共有のミーティングルームや休憩スペース、会議室などが設置されています。個室の広さは一人から数十人レベルなどさまざまです。

なお、レンタルオフィスは基本的に交通の利便性が高い場所にあります。たとえば都心部やランドマークとなるビルの中などに設置されることが多く、従業員やクライアントのアクセスが良いことも好まれる要因です。また個室利用ができるといっても音漏れがあると情報が筒抜けとなってしまうこともがありますので、オンライン会議を頻繁に行う会社であれば、完全個室型(密閉型)のレンタルオフィスがおすすめです。

シェアオフィス

シェアオフィスとは、複数の企業や個人が共有するオフィススペースのことを指します。一つのオフィスビルや施設内に複数のテナントが存在し、それぞれが必要なスペースを共有する形態です。そのため、賃貸料や光熱費などのコストを削減することができ、コスト効率の良いオフィスとなります。

ただし、シェアオフィスはセキュリティ面に不安がある点や、複数企業が同居しているため、設備など使いたい時に使えないことがあり得ます。たとえば週1程度の顔合わせの場に利用する(通常は自宅やカフェ等で仕事する)などには向いています。

コワーキングスペース

コワーキングスペースは、複数の個人や企業が共有するオフィススペースの一種です。通常、自営業者やスタートアップ企業、リモートワーカーなど、異なるバックグラウンドを持つ個人やチームが利用、どちらかというと構成メンバーが少ない場合に利用されるオフィス形態です。利用者は必要な時にコワーキングスペースを訪れ、必要なスペースを利用することが可能。賃貸オフィスを単独で借りるよりも費用を削減することができます。自宅やカフェなどの環境では生じる孤独感や集中力の低下を回避できる点がメリットです。

ここで紹介した3つのオフィス形態は、いずれもコストメリットが高く企業のダウンサイジング適しているものです。とはいえ、機密情報を扱うようなIT企業であれば、シェアオフィスやコワーキングスペースよりもレンタルオフィス、自由な社風を保つのであれば、シェアオフィスやコワーキングスペースなど、企業風土に合ったものを利用することが重要です。

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