レンタルオフィスで家賃支援給付金を申請する方法

新型コロナウィルスにより緊急事態宣言が発令された2020年、多くの企業は、売上の減少を余儀なくされ、中には事業継続をあきらめるような企業も出てくるなどの未曽有の事態を迎えています。

事業継続のためには売上はもちろんのこと、地代・家賃といった支払に関しても考えていかなければなりません。特に地代・家賃は売上がなかったとしても毎月かかるもの。支払いが滞ってしまえば、事務所を出されてしまう危険もあります。

そこで経済産業省は、5月に発令された「緊急事態宣言」の延長等により、売上減少に直面する企業の事業継続を支えするため、賃借人(借主)である事業者に向け、地代・家賃(賃料等)の負担を軽減する給付金を支給することを決定しました。これは「家賃支援給付金」と呼ばれるもので、地代・家賃の支払いを行っている企業や個人事業主、フリーランスが対象とされています。

対象者

  • 資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者
  • 医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人とった会社以外の法人
  • 個人事業者(フリーランス含む) など

この「家賃支援給付金」、レンタルオフィスを利用している方でも申請ができるって知っていましたか?

なんとなくレンタルオフィスだと固定の地代・家賃が発生している感じがしないということもあって、申請できないだろうと思っていた方も多いのではないでしょうか?

実はそんなことはなく、きちんとした手続きを踏むと申請が可能です。

今回は、家賃支援給付金についての基礎知識や申請から給付の流れ、レンタルオフィス利用者における家賃支援給付金の申請方法などについてまとめてみました。

家賃支援給付金についての給付対象者

家賃支援給付金は6月中旬に国会で閣議決定され、2020年7月14日から受付が開始された給付金です。

申請期間は2021年1月15日までとなっており、締め切りまでに申請受付完了したもののみが対象となっています。

この給付金の対象者は以下のすべてに当てはまる方が対象となっています。

法人の場合

(1)2020年4月1日時点で

  • 資本金の額または出資総額が10億円未満であること
  • 資本金の額または出資総額が定められていない場合、 常時使用する従業員数が2,000人以下であること

(2)2019年12月31日以前から事業収入があり、今後も事業を継続する意思がある企業であること

(3)2020年5月~2020年12月までの間において新型コロナウィルス感染症の影響により、以下のいずれかにあてはまること

  • いずれか1か月の売上が、前年同月と比較して50%以上減であること
  • 連続する3か月の売上合計が、前年同期間の売上の合計と比較して30%以上減であること

(4)他人の土地または建物を自身で営む事業のために直接占有し、使用・収益することの対価として、賃料の支払いを行っていること

 

個人の場合

個人の場合は資本金の額または出資総額についての内容以外、法人のものと同じです。

 

家賃支援給付金の給付対象外の方

以下の項目に当てはまる方は家賃支援給付金の給付対象外となります。また一度度家賃支援給付金を受けられた方は、再度申請することはできません。

(1)風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律に規定する「性風俗関連特殊営業」、または当該営業に係る「接客業務受託営業」を行う事業者

(2)宗教上の組織もしくは団体

(3) (1).(2)に掲げる者のほか、給付金の趣旨・目的と照らし適当でないと中小企業庁長官が判断する者

家賃支援給付金申請のベストなタイミングは?

給付対象者は、申請期間中のどの月においても申請を行うことが可能です。
支払猶予を受けた月がある場合や賃料の値下げや免除を受けた月がある場合、そのタイミングで家賃支援給付金を申請する必要はなく、猶予期間や免除期間が解除されて元の賃料水準に戻った際に申請を行えば、元の賃料をベースに算出された給付金を受け取ることができます。

家賃支援給付金の給付額について

家賃支援給付金の給付額ですが、法人の場合には月額給付額(上限100万円)の6倍となる、最大「600万円」、個人事業者の場合には月額給付金額(上限50万円)の6倍となる、最大「300万円」が一括支給されます。

この給付額の算定方法ですが以下のような計算式により算出されます。

法人の場合

支払賃料(月額) 給付額(月額)
75万円以下 支払い賃料×2/3
75万円を超える場合 50万円+(支払賃料の75万円の超過分×1/3)
※但し月額100万円を上限とする

 

個人の場合

支払賃料(月額) 給付額(月額)
37.5万円以下 支払い賃料×2/3
37.5万円を超える場合 25万円+(支払賃料の75万円の超過分×1/3)
※但し月額50万円を上限とする

 

家賃支援給付金申請から給付の流れ

家賃支援給付金の申請から給付までの流れですが、事前に必要書類の準備を行います。

必要となる書類は

  • 自筆の誓約書(家賃支援給付金ホームページからダウンロード)
  • 賃貸借契約の存在を証明する書類(賃貸借契約書など)
  • 申請時の直近3ヶ月分の賃貸支払実績を証明する書類(銀行通帳の控えや振込明細書など)
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 売上減少を証明する書類(確定申告書、売上台帳など)

となります。まずはこれらの書類を揃え、デジタルデータ化したのちに申請をネット上で行います。郵送申請は行っていないため、準備の際に間違えないようにしましょう。

また、デジタルデータ化する際には「添付ファイルにパスワードを設定しない」、「画像の視認性に注意」、「見切れた状態で撮影したものを添付しない」、「申請法人以外の法人の書類を添付しない」「ファイル形式はPDF・JPG・JPEG・PNGとする」「ファイルサイズは10MBまで」といった点に気を付けましょう。

電子申請の流れ

(1)「申請する」ボタンをクリックする

(2)メールアドレス等の情報入力を行う
(3)登録メールアドレスに届いたメール受信確認

(4)確認メールに記載されているURLをクリック
(5)手続き用ログインIDおよびパスワードを登録

(6)マイページにログインし各種情報を入力、さらに準備した必要書類を添付

(7)手続き完了

(8)審査内容の確認(※不備のある場合には連絡が入ります)
(9)給付通知書の発送・登録口座への入金

 

不備がないよう資料を作成するために

添付した書類に不備がある場合、内容確認のやりとりに手間がかかっていまい、給付金の支給までに時間を要します。結果として給付が受けられないこともありますので、申請資料の作成の際には不備がないようにしっかりと作成しましょう。

以下のような点は記入間違いなどの不備が起きやすい箇所となっています。

  • 賃貸借契約書に書かれている賃貸借期間が、2020年3月31日時点および申請日時点の両方で有効であると確認できない
    ⇒賃貸借契約書は1年経過ごとに自動更新される契約となっているものが多いため、抜けてしまいやすい。このような場合「更新覚書」などを添付するとよい。
  • 賃貸人または賃借人の署名や捺印の不備
  • 通帳の表面および記帳面に関する資料提出において、口座名義人や振込先、日時、金額が確認できない
  • 通帳記載口座名義または口座番号と申請時の入力した口座情報が異なる
  • 自宅を事務所にしている場合、事務所として利用している地代、家賃以上の支払実績を申請してしまっている
    ⇒自宅兼事務所の場合には事業用の地代・家賃として税務申告しているもののみ給付君の対象となる。

 

レンタルオフィスの利用でも家賃支援給付金を申請できる?

賃貸オフィスではなくレンタルオフィスを利用している法人や個人事業主の方でも、給付金の対象者として該当するのであれば家賃支援給付金を申請することに問題はありません。

ただし、レンタルオフィスを利用している場合には確認しなければならない事項があります。それは「賃貸借契約があるかないか」という点です。

レンタルオフィスとの間に賃貸借契約書が交わされているのであれば、それをデジタル化して提出するだけで終了です。しかし賃貸借契約がない場合、代わりに「賃貸借契約等証明書」というものを提出する必要があります。

賃貸借契約等証明書は全部で4種類存在しますが、その中から「契約書等が存在しない場合(様式5-4)」のPDFファイルをダウンロードして印刷、記入します。

ファイルは経済産業省のホームページから入手できます(URL: https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/index.html)。法人向け、個人向けでそれぞれありますので間違えないようにダウンロードしましょう。

この賃貸借契約等証明書には、貸主である賃借人の署名が必要となりますので、レンタルオフィスの運営会社に確認・記入依頼を行うようにしなければなりません。やり取りの形態はレンタルオフィスによって異なってきますので、時間がかかることを見越して早めに手配しておくことが必要です。

まとめ

以上のように自社がレンタルオフィス利用であっても、給付金対象者に該当するのであれば家賃支援給付金を申請することはできます。また賃貸借契約がない場合「賃貸借契約等証明書」を準備することによって家賃支援給付金の申請が可能となります。

一般的なレンタルオフィスでも月に数万円~数十万の支払いは毎月発生しています。家賃支援給付金申請には、資料作成するのにレンタルオフィスへの署名依頼など、相応の手間はかかりますが、支払賃料が月額75万円以下の場合で支払賃料の2/3、月額75万円を超える場合には50万円+75万円を超過した金額の1/3(100万円を上限)の6倍も補助される非常にありがたい制度です。

現在はそこまで売上減に陥っていないので大丈夫という企業の方も、年末や年明けに向けて取引企業の状況が変化して影響を受ける可能性もあります。自社が給付金対象者かどうかだけでも確認しておくといざというときに慌てなくて済みますので、家賃支援給付金のホームページ(URL: https://yachin-shien.go.jp/index.html)を一度見ておくとよいでしょう。

申請期間は2021年1月15日までと、残された時間はあまり長くありませんので、コロナ禍という特殊な環境の中で過ごす2020年、売上減少を感じているレンタルオフィス利用中の企業の方はこの制度をぜひ活用してみましょう。

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